ゆら~りらんにんぐ部

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二郎とトレランレースの違いが分からなくなってしまったランナーの話

 SNSで二郎好きの100マイルランナーをよく見かける。知人ではそれほど多くないので、実数は少ないかもしれない。普通に考えて、一食2000キロカロリー以上で、糖質の塊なので、ランナーは避けたほうが良いのは間違いない。確実に太るし、健康的とは言い難い。 

 常識的に考えて食事は、「美味しい」とか「食欲が満たされる」とか「体力の回復」とか「必要な栄養素を補える」が重視されると思う。
 二郎は正直そこまで美味しくない。味を追求した美味しいラーメンはいくらでもある。

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 食欲は満たされるどころか満腹すぎて気持ち悪くなる。体力は下手すると落ちる。食後に気持ち悪くなったり下痢になるひとは多い。必要な栄養素は明らかに偏っていて、満たされているとは言い難い(カロリーだけは明らかに満たされている)

 なのになぜ頻繁に通ってしまうかと考えると、多分、「あえて身体に負荷を掛けにいっている」のだと思う。
「二郎という空間に、自分の限界を試しに行っている」と言っても差し支えがない。二郎はトレランレースに近いのではないかと思ったのはこの部分だ。


 二郎は量が多すぎる。単純に大食いだからといって完食できる保証はない。明らかに完食するためのきめ細やかなスキルがいる。これは超長距離のトレランレースで、単純に走力(例えばフルマラソンのタイムとか)だけが反映されるわけではないのとよく似ている。

 

 まず、完食は大前提になる(レースだと完走に当たる)。完食できずに丼をカウンターの上にあげるとき、惨めな気持ちにならないだろうか。いや、絶対になる。紛れもなく負け犬だ。……恥ずかしい! 一刻も早く店を後にしたい!
 あの感じは、レースでリタイアして回収車に運ばれてるときとそっくりだ。

 

 二郎はデフォルトでも量が多い。券売機に金を入れて、大ラーメンにするのか、小ラーメンにするのかの選択からレースは始まっている。大ラーメン(豚)は100マイルレースで、小ラーメンの麺半分はミドルクラスのレースに当てはめるとわかりやすい。
 大ラーメンに挑むには万全の体調が求められるし、細かい技術も必要になる。麺半分は、初心者でも押し切れるし、普通のラーメンの食べ方でも完食できる。体調がイマイチなときに選択してもいい(そもそも来店しないほうがいいという突っ込みが入りそうだが、ジャンキーはつい通ってしまう)

 

 セルフで水を汲んできて、椅子に座って、精神統一をする。
 着丼前、店員に「ニンニクいれますか?」と問いかけられる。
 「野菜」「ニンニク」「アブラ」「カラメ」「ゼンマシ」などと、コールして量を増やしてもらう。
 ひとそれぞれ、アブラが多いと気持ち悪くなるとか、ニンニクはあまり得意ではないなど好みがあるだろう。苦手なものは増量トッピングを避けてしまいがちだが、ここに伸びしろがある。自分は、カネシが苦手だと思い込んでいたが、カラメを立て続けに試していたら美味しく感じるようになって、世界が広がった。
 マラソンのトレーニングでゆるいロング走ばかりしていて、スピードがないのに苦手なインターバル走をしない、みたいなのと一緒だ。ランニングは長所を伸ばすよりも弱点を克服すると一気に走力があがる(アレルギーを持っている場合や、本気で気持ち悪くなって残してしまうようなら避けること。あくまでも目標は完食なので)

 

 着丼したら、まずは麺がスープを吸わないように野菜返しをする。これは先に述べた完走のためのコツになる。こういう細かい技術の積み重ねが完食を左右する。
 わしわしと、うどんのような麺を食べる。
 間違いなく味がマンネリ化してくるので、七味などで味の変化を付ける。溶き卵を注文してそれに浸けてすき焼きのようにして食べてもいい。魚粉トッピングなども駆使しよう。これはレース中のエイドでの補給や着替えの気分転換と同じだ。

 

 無事完食しても油断は大敵だ。胃がもたれるかもしれない。お腹がゆるくなりがちなので下痢になるかもしれない。体調によって胃薬を投入するか安静にするのか判断する。判断基準は意外に多い。スープが非乳化だったか乳化だったか、自身のアブラやニンニクの許容量でも腹が決壊するかどうか判断できるようになる。
 これは100マイルレースも同じだ。完走後、体調不良が数ヶ月続くこともある。免疫力が急降下するので風邪を引きやすくなったり、アレルギー反応が過剰になり、高熱が出たりする。100マイルレースはレース後の適切なケアが一番重要で、それができてないと一人前の100マイラーとは言い難い。

 

 もうひとつ、二郎がトレランレースではないかと感じたのは、独自のルールがあることだと思う。
 並び方やコールや食ったらさっさと出るなどの決まり事は、トレランレースのレギュレーションと置き換えても差し支えがない。(同じ二郎なのに店ごとにルールや味が微妙に違うのもトレランレースっぽい)

 

 隣で得体の知れないおっさんリーマンが、大汗を噴き出しながら、全マシの豚大ラーメンと死闘を繰り広げている。いかに早く完食するか、競おうとは思えない。同志として自然と完食を応援してしまう。こちらも、ただ完食を目指して、「イマ、ココ」の境地で、胃袋に二郎を叩き込み続ける。そうしていると、意識が曖昧になり、二郎を喰っているのか、疾走してゾーンに入っているのか分からなくなってくる。