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OSJ KOUMI100対策法

 2018年の国内100マイルレースで屈指の難易度になったKOUMI100について、分析や対策をあれこれ書きます。完走狙い~上位10%くらいまでは参考になると思います。

 ちなみに筆者は18年だけではなく17年も完走しているので、前年との比較はそれなりにできているつもりです。

  

 場所:長野県小海町 八ヶ岳北部東側

 周回レースです。5周します。
 2017年34kmx5周=170km 累積標高8000m
 2018年37kmx5周=185km 累積標高8500m

 2019年は元のコースに戻るのかどうかは現時点では不明です。

 

 2018年は台風の影響で、山岳区間のトレイルが崩壊し、遠回りのピストンになったため、総距離185㎞、累積標高8500mになってしまいました。

 KOUMI100ではなく、「KOUMI115」です。おそらく国内最長100マイルレースです。ですが、36時間の制限時間は変わらなかったので、完走率20%台のサバイバルレースになってしまいました。

コースについて

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 マップのように、スタートゴール会場付近のロード区間>林道区間>ロード区間>山岳区間と進んでいき、標高も徐々に上がっていきます。総じて走りやすいですが、山岳区間だけ足場が悪く、急登と激下りです。
 最高地点の標高は約2100m。標高の高い場所で走る時間が長いです。100マイルということもあり国内のレースで一番長いと思います。

 標高が高い山岳区間は酸素が薄いので負荷が高くなり、息が上がりやすいです。
 天候も不安定になりやすく、突発的に雨が降ったり、濃霧が発生したりと、気力を使う場面も多いです。
 18年のレースで完走率が低くなったのは、この区間の距離が増え、相乗して活動時間も増えたことが大きな原因かとおもいます。もし標高1000m程度のスタート地点付近で距離が増えたとしてもここまでひどくはならなかったでしょう。

 KOUMIは、「会場付近の区間と、山岳区間は別レース」になると認識して、走り方や装備を切り替えるのが重要です。具体的に言えば、山岳区間では負荷が高くなるのでペースを意図的に落としたりする対策が重要になります。

 

 KOUMIは走れるコースですが、1周目から頑張るとゆるやかな死が待っています。
 筆者は「自分の身体の声」をまったく信用していないので、「マフェトン理論」に則って、心拍数を抑えてゆらりと走っています。

 緩い斜面は、走るかどうか悩みますが、疲労度合いと精神状態と相談しましょう。
 走れそうな緩い斜面を歩いてると、いつまでも進まないので、レースがとてつもなく長く感じます。永遠に終わらなそうな錯覚に陥ったときは、大体身体も元気です。軽く走りましょう。疲れてると感じるなら回復させながら歩きましょう。ガシガシとパワーウォークするのは厳禁です。


完走するための対策

まずは念頭に置くこと

 周回レースは、「飽きて精神的にきつい」「スタート地点の大エイドに戻ってきたときに辞めやすい」「雨が降っていたりするとコンディションがどんどん悪くなる(そこにまた突っ込まなければならない覚悟がいる)」など、欠点が多くあります。

 同時に、何度も戻ってこれるので、「補給食をあまり持たなくてもいい」「装備をフレキシブルに変えられる」など利点も多いです。
 なので、周回レースの欠点をできるだけ潰し、利点だけを甘受するにはどうするかを考えましょう。途端に完走しやすい100マイルレースになります。

 具体的にどうやったかを以下に書いていきます。

 

重要な事前準備(主にぺーサーについて)

 まず充分な睡眠を確保しましょう。できれば宿で前泊しましょう。テントや車中泊でもぐっすり眠れるひとはそれでもいいです。緊張で眠れないひとは容赦なく睡眠薬を投入しましょう。眠れないで100マイルに挑むのは地獄です。

 

 4周目からぺーサーが付けられます。しかもKOUMIは費用も安いです。利用しない手はないです。
 一緒だと細かなサポートを受けられるので心強いです。話してると眠気も飛びます。
 筆者は、とりあえず3周してぺーサーと合流すれば完走したようなものだと自分をだましてレースしています(勿論三周で体力気力を使い果たすのは論外ですが)。4、5周目をあまり考えずにレースできるのは精神的に大きいです。
 合流するまでは、ペースが合う人を見つけたら話しながら一緒に走ると尚良いです。ひとりで周回は気が滅入ってきて精神がやられます。
 ぺーサーを雇うのは、サンクコストの弊害を利用しているとも言えます。
 ぺーサーの費用を払っているとか、せっかく会場まできてもらっているのに悪いとか、知人にへたれだと思われるんじゃないかなど、各個人のスタンスでサンクコストの弊害を設定しましょう。
 上記のように積み上げ、「だからリタイアできない。完走するしかない」と自己暗示を掛けて、モチベーションを維持する仕組みにします。
 それと、周回ではない100マイルレースだと多少のトラブルでも回復を信じたりして先に進めますが、周回レースだと途端に辞めがちになります。トラブルが起こったり、嫌になったコースをまた走るのは精神的にきついからです。想像できることが逆に仇になります。
 これもぺーサーと走ることができれば、大幅に緩和できます。ひとりで立ち向かうわけではないからです。


ストックについて

 ここが一番重要な項目かもしれません。
 KOUMIはスタートからストックが使えます。このレースの完走の鍵はストックにあると言っても過言ではないと思います。
 利点は脚が温存できることです。歩行速度も速くなります。まさにチートアイテム。それがストックです。

 KOUMIレベルの累積標高の100マイルレースなんてファンランナーレベルだとほとんど歩くことになります。その速度がベースアップできるので使わない手はありません。

 苦手なら事前に練習しましょう。登りの使い方だけでもいいです。
 欠点はあります。ストックを使うと脚の疲労は大幅に軽減されますが、全身運動になるので、カロリーの消費は多くなります。補給食はストック無しのときよりも多めにしたほうがいいです。
 それでもストック持参をオススメします。もしそれで一周走ってみて、邪魔だと感じたら、二周目から持たなければいいだけです。これは先に述べた周回レースの利点のひとつです。

 

ストックのメリハリある使い方

 下りでもストックを上手く使いこなせるひとはいいのですが、筆者は下手なのでしまってます。山岳区間の激下りでは、両手がフリーなほうが安全に降りられますし、ストックを置く場所に気を使うので精神が摩耗します。折る確率も上がります(折ったときの精神的ダメージが半端ないですし、ダクトテープで補修するのも面倒すぎます)
 それに手に持っていると、補給しづらかったりと、なにかと神経を使います。エイドでも一旦置いて休憩してしまうと、出発の際に置き忘れる危険性があるので注意を払う必要があります。

 

ストックのすぐ取り出せる収納方法

 ザックを降ろすのは論外です。面倒臭すぎます。
 筆者は、折りたためるストックを使っていて、折りたたんだ左右のストックをヘアゴムでまとめています。

 最近の折りたためるストックには、畳む際に使えるマジックテープが付属していますが、ヘアゴムのほうが圧倒的に手間がかかりませんのでオススメです。

 そしてヘアゴムでまとめたストックを、ULTIMATE DIRECTIONのザックの背面に斜めに突っ込んでます。

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 このように入口をアクセサリーカラビナで細工して、ジッパーが広がらないようにしています。ジッパー方式の色々なザックで応用できます。

 ラフに突っ込んでますが、これで中のものが落ちたことは一度もないです。
 カラビナは100円均一で売っています。なるべく小さくて軽いものを選びましょう。


 ウルトラスパイアのザイゴスなどザックの下にまとめて括り付けられるものもオススメです。とにかく、いちいちザックを降ろさずに済むようにしましょう。

 前面の収納の外側に付けられるザックもありますが、収納に時間がかかるのと、腕の振りが邪魔になるのでオススメできません。

 

 ウエストベルトに括り付けるのもいいです。Nakedは特にオススメです。取り出したり仕舞ったりする際は前面に持ってきて、作業が終わったら後ろに回しましょう。

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ストックをどこで出すか、仕舞うか

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 高低図をみれば分かると思いますが、単純に、「登る前に出し、降りる前にしまっている」だけです。筆者は完全にパターン化しています。

 

 スタートしてロードを走り、林道に入るすぐ手前にアスファルトの急坂があります。その手前でストックを出します。(A) 地図のように南西に方角が変わるので分かりやすいです。

 林道は走れますが、基本的には歩きをオススメします。平地と緩い斜面が所々にあるのでそこは走りましょう。

 林道を抜けるとすぐのロードに第一エイド(復路では第四エイドになる)があります。この先は300mくらいロードの登りがあります。これを登り終えたらストックを仕舞います。(B)

 しばらくはロードを下ります。峠走をイメージするといいです。大腿四頭筋を使わないようにゆるく走りましょう。広いロードに出て、道を左に曲がると橋を渡ります。ここは路面が濡れてることが多いです。夜中でも分かり易いです。ここでストックを出します。(C)

 ここから基本ずっと登りです。林道区間と同じく、基本歩きで、平地と緩い斜面では走りましょう。
 山岳区間の最高点がチェックポイントになっています。序盤は順番待ちになると思います。待ってる間にストックを畳んで仕舞いましょう。

 チェックを受けたらひたすら下ります。激下りなので両手を付いて下る箇所が多いです。筆者はストックを仕舞ったほうが全然早かったです。

 先述した橋(C)まで戻ったら、ストックを出します。そのまま第四エイド手前の坂を登り切ったらしまいます。第四エイドでしまってもいいでしょう。

 そこからは大エイドに戻るまでは手ぶらで走ります。


補給について

 筆者は基本的に1時間に1本のジェルですが、ストックを使うレースは50分に1本にしています。山岳区間では40分に1本、もしくは登る前に飲んでいます。負荷に応じて変えています。

 昼間は基本的に暑いです。しかし、冷たい水をがぶ飲みすると胃のトラブルが怖いです。できれば昼から温かい飲みものを補給します。筆者の場合、冷たい水分をがぶ飲みしたくなったらペースの上げすぎを疑って、あえて抑えていました。
 17年は昼間からエイド毎に温かい飲みものがありました。18年は日中の1~2周目は温かい飲みものが無かったです。仕方がないので、冷水を一旦口に含んで温めてちびちびと飲み込んでいました。

 夜間は冷えるので、あまり水分を摂らなくても済みます。エイドの間隔も短いので、エイド毎に白湯を基本に味噌汁などの温かい飲みもの(お汁粉が死ぬほど美味しかったです)を補給していました。


 長丁場になる山岳区間は、お湯を持ち歩けたらベストです。筆者は普通のプラのボトルにお湯を入れてもらってましたが、あっと言う間に冷めました。もし今度も出場するなら、軽いサーモスのような容器を導入するつもりです。
 ファンランナーレベルの100マイラーの基本はお湯だと思っています。

 

 大エイドに戻ってきたら、ウイダーインゼリー(消化しやすい糖質。約200キロカロリー)とアミノバイタルなどのアミノ酸を必ず補給していました。
 KOUMIは蕎麦が食べ放題です。一杯は必ず食べていました。塩分補給にもなります。食べられなくても汁は飲み干しましょう。
 汁は胃のケアのために温かくしてもらっていました。ぺーサーが付いているなら、次の周の準備をしている間に温かい蕎麦やお湯を準備してもらうといいです。


大エイドについて

 KOUMIは周回レースなので、走ってるときにトラブルに見舞われても、周回毎に装備を変えたりして修正できます。
 走ってるときに改善しようと思ったことを忘れないようにします。
「注意力が落ちてきて山岳区間で足に擦り傷を負うことが多くなったので、次の周回ではゲイターを身に付けよう」
「夜間の濃霧でライトが乱反射してなにも見えないので、次の周はヘッデンにイエローフィルター付けよう」
 そういう細かいことです。忘れやすいので、実際に「ゲイター付けろ!」とか発声するといいです。ぺーサーがいるなら伝えて憶えさせましょう。メモ代わりに便利に使いましょう。
 大エイドに入る前のロード区間でそれらをまとめて、大エイドで具体的になにをするかシミュレートしておきます。入ったら、さっさと用事を済ませましょう。やることは結構ありますが、10分以内に済ませましょう。だらける気持ちが湧き出る前に出発します。その10分でも肉体的にだいぶ回復しているはずです。

 大エイドは、基本的にやる気がどんどん失せていく魔性の場所です。
 しかしここは、修正が効く場所です。修正ができれば、状況はマシになります。帰ってくる前よりも走りやすく改善できれば(したつもりでもいいです)自然とやる気は回復します。


まとめ

 「100マイルレースは壮大な旅」などと格好いい形容詞で語られることが多いですが、周回の100マイルレースは修業要素が強いです。どちらかというと、延暦寺の周辺をぐるぐるまわる千日回峰行に近いです。

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 千日~は断念したら自害が待ってますが、KOUMIは死ななくて良いので楽です。気軽に挑んで楽しみましょう。楽しむ気持ちが一番パフォーマンスを向上させてくれます。